エンジニアのためのマネジメント

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エンジニアからみるマネジメント基礎 - 第6回 よい職場づくり

Management
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では前回に引き続き、以下の全7回のうちの第6回目になります。

  1. 管理の基礎
  2. 仕事の管理
  3. 改善と問題解決
  4. 人間行動の理解
  5. 部下の育成
  6. よい職場つくり ← 今回はここ
  7. 管理者の自己啓発


第6回 よい職場づくり

職場の目標を達成するために、管理者はメンバー一人ひとりが常に高い意識をもち、相互に啓発しあう生産性の高い職場づくりを心がけなければならない。

6.1 よい職場づくり

職場にはそれぞれ固有の雰囲気がある。これは社風や風土と呼ばれます。この風土は「みえざる掟」として、集団内のメンバーの行動に影響を及ぼす力を持っています。風土が問題となるのは、その行動に及ぼす影響力からであり、その関係をクルト・レイヴィンは次のような関数式で説明している。

B = f(P・E)

人間の行動(Behavior)は、単に本人の能力や性格(Personality)のみならず、その職場が醸成する環境風土(Environment)によって大きく影響を受けるということである。

6.1.1 よい職場とは

よい職場とは「効率性」「健康性」の高い職場である。効率性とはインプットに対するアウトプットの比であり、健康性は活き活きと働ける開放的な風土のことである。

よい職場の図
よい職場の図
  • 目標指向性

職場の指向する目標が明確なものであるか、その目標が一人ひとりのメンバーにとって自覚されているか、組織の目標と個人の目標の融和が図られているか

  • 効率性

仕事の分担が明確であり、計画的に仕事が進められているか、その生産性は高いか

  • 開放性

率直で自由な行動が受け入れられ、率直な意見交換と意思決定がなされているか

  • 意欲性

メンバーがやりがいを感じて真剣に仕事に取り組み、自分の仕事や職場にプライドをもっているか。また将来に希望をもって仕事に取り組んでいるか



6.1.2 よい職場づくりのポイント

管理者は職場のコミュニケーションを促進し、管理者自身が効果的なリーダーシップを発揮すること。


エンジニアマネージャーとして
エンジニアは製造業でいえば工場においてある製造装置である。しかし機械でなく、(かなり)わがままな人間である。工場という職場の環境にすごく生産性は依存しています。最近はなくなってきただろうが、集中してプログラミングしているときに、大きな音で電話が鳴るようでは、効率性のいい環境とはいえない。エンジニアにとって快適な職場を作るようにマネージャーは動かなければなりません。エンジニアはピープルウェアです。

6.2 職場のコミュニケーション

ある調査によると管理者の1日の仕事の中でコミュニケーションに費やしている時間は80%にも達するという。組織を組織たらしめるのはコミュニケーションであり、その網の目の結合点にいるのが管理者である。

6.2.1コミュニケーション促進

  • コトバはコンテナである

あくまでコトバは意味を運ぶコンテナである。

  • 伝達のゆがみ

伝達のゆがみを予防するには

  1. また聞きを避ける
  2. 中間の数を減らす
  3. 事実と推測を混同しない
  4. 正確にゆっくりと話す
  5. 順序立てて話す
  6. ときどき質問をはさむ
  7. 復唱して確認する
  8. 要点や数字はメモをとる
  9. 資格に訴える工夫をする
  • コトバの奥にはココロがある

パンクで困っている男に、若者が「パンクですか?」と聞いたら、男は「見ればわかるだろう」と苛立つかもしれません。若者は「手伝いましょうか」という意味で聞いてのかもしれない。これではコミュニケーションは成立していない。「きく」には2種類ある。耳で「聞く」のではなく、心で「聴く」ように心がけたいものである。


  • 率直なコミュニケーション

率直で開放的なコミュニケーションの雰囲気をつくるためには、リーダーはじめメンバー全員が受容的・許容的な態度で仲間の発言を傾聴するように心がけなければならない。


6.2.2 積極的傾聴

積極的傾聴とは、相手の言わんとしていることを相手の身になって真剣に傾聴し、理解しようとする積極的な態度や姿勢のことである。そのためには以下の点に気を付けたい。

  1. 評価的、批判的な態度をとらない
  2. 受容的、許容的な姿勢を示している
  3. 相手の言わんとする事の意味全体を聞いている。
  4. こちらが理解していることを相手にフィードバックしている

6.2.3 カウンセリング・マインド

管理者はカウンセラーではないが、カウンセリング・マインドを身に着け「対等で自由にものが言え、どんなことを言っても許され、わかってもらえ、人間として受け入れられ、人間的な暖かさが漂うような雰囲気」をつくりあげる努力をしたいものである。


エンジニアマネージャーとして
コミュニケーションの促進はたしかに大事である。だが、このエンジニアという人種はみんながみんなコミュニケーションが得意ではない。1人1人のコミュ力に応じたコミュニケーションをエンジニアのマネージャーしなければならない。聞き方一つで、彼らは饒舌にも寡黙にもなるのだから。


6.3 職場を動かすリーダーシップ

6.3.1リーダーシップは影響力

リーダーシップとは人が人に及ぼす影響力、つまり対人影響力である。管理者でいうならば「管理者のリーダーシップとは、職場の目標を達成する方向に向けて、職場のメンバーの個性の発揮と自発的な行動を促進しながら影響力を及ぼしていく過程」であるといえよう。

6.3.2 効果的なリーダーシップ

管理者の意図を部下が受け入れた結果、失敗したか成功したか、また成功したとしても、喜んで行ったのか渋々行ったのかによって、リーダーシップの効果は変わってくる。つまり、組織の要請にも応えられ、部下の欲求を充足できるリーダーシップこそ効果的なリーダーシップである。

6.3.3 リーダーシップの6機能

管理者のリーダーシップの機能は、上司に対して2機能、部下に対しては4機能に分けて考えられる。

  • 統合性機能(対上司)

上司の意図や考え方を理解して、共通の基盤に立って補佐することや、職場の声や状況をタイムリーに上司に伝えるなどの行動であり、上司補佐機能として重視されている。

  • 上動性機能(対上司)

自らの考えを上司にぶつけて上司を揺り動かしていく働きで、具体的には問題提起や提案をしたり、現状や将来についての意見を述べたりなどの行動である。

  • 要望性機能(対部下)

部下に仕事の指示をしたり、その質をチェックしたり、目標の達成を厳しく要求したり、部下に高い目標設定を求めたりなどの行動である。

  • 共感性機能(対部下)

部下の立場や気持ちに配慮し、部下の行動を援助する働きである。個々の異質な人々が協働する職場を統合するための潤滑油として、良好で温かい人間関係の醸成、部下の成長の支援、部下の個性発揮の促進とそのための共感的な態度が管理者には求められる。

  • 通意性機能(対部下)

経営トップや会社の状況、戦略などを、部下に伝えて理解してもらう意思疎通の働きである。

  • 信頼性機能(対部下)

管理者は部下からの信頼を得ることが要求されている。それは管理者自身の職務上の能力、管理能力と密接に関連している。


6.3.4 リーダーシップの開発

管理者の影響力の源泉には大きく分けて2種類ある。1つは地位や権限であり、もう1つはリーダー自身に備わっている全人格的な影響力である。地位や権限を振りかざしたリーダーシップには限界がある。全人格的な影響力を向上させるべきである。そのためには

  1. 自分の行動が周囲に及ぼした反応に敏感になること
  2. 不適切な行動を改善する勇気と柔軟性をもつこと
  3. 他者からの率直な指摘を素直に聴くこと
  4. 行動改善の目標を設定し、努力を持続すること
  5. 専門機関による訓練プログラムに参加すること

などである。


エンジニアマネージャーとして
エンジニアメンバーへの対人影響力をどうしたら持てるかというと、まずは技術力である。エンジニアとして技術がないとか、思想をもっていないとかだと、なかなかメンバーへ影響力を発揮するのは難しいかもしれない。「技術のことはこいつはわかっていない」と思われてしまっては、リーダーシップを発揮するのは困難になるであろう。全ての技術のおいて全メンバーより詳しくなるのは不可能であるが、わからないことをきちんと聞ける姿勢を持ったり、的を得た質問するなどして尊敬を集めれるようにしましょう。

以上、第6回 よい職場づくりでした。